「世界中を旅する教育者」を目指すクマのブログ

大好きな教育を多角的な視野で俯瞰し、日々関心を持ったことをブログにあげていきます。

教科書が読めないこどもたちと日本のオンライン教育(前編)

「こどもの3分の1は簡単な文章が読めない」

 

これ、本当だと思いますか。

 

近年、AIテクノロジーの進歩が著しく、身近なところでは、自動運転や無人コンビニが実現に近づき、その他ディープラーニング強化学習といった技術向上による様々なAIに関する記事が見受けられます。

 

さてそんな中、最近読んだ本のなかで興味をひかれたのが「東ロボ君」の物語です。国立情報学研究所所長、簡単に言うとAI技術の国内最先端の研究をしている研究所のトップである、新井紀子さんが始めた人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるのか」がテーマです。

 

2011年に始まり、10年計画で進められたこのプロジェクト。

最初は、センター模試で900点満点中387点。

全受験者の平均点を大きく下回る結果でした。

 

それから、東ロボ君は年々たくさんの成長を重ね、現在では大都市圏の人気私立大学、いわゆるGMARCH(学習院大学明治大学青山学院大学立教大学中央大学、法政大学)、関関同立(関西大学関西学院大学同志社大学立命館大学)の一部の学部学科には合格するレベル。

 

東大記述模試では、数学では6問中4問を完答し偏差値76.2と、数学に関しては上位1%に入るほどに。拍手喝采です。

 

東ロボ君に弱点はないのか、、

 

実はあります。

 

それは、国語と英語に関しては、ある一定のラインを超えると全く手が出せなくなり、思考停止となることです。

 

そう、ロボットには読解力がないのです。

 

AI技術が発展していく中で

「シンギュラリティは来る」

という誤解が生まれています。

 

シンギュラリティとは「AIが人間の能力を超える」という意味です。

 

しかし、AIは技術的特異点を得るだけであり、人間の思考力を得ることはできません。AIは腐ってもコンピューターであり、論理、確率、統計の分野で優れているだけなのです。(それだけでも、現代科学の進歩には欠かせないAIは現時点でも様々な分野で成果を上げており、これからも多くの偉業を成し遂げるでしょう。)

 

ここで、この本の著者が声をあげて言っていることは、読解力がヒトより劣っているAIでもMARCHレベルであるということです。

 

「AI技術の向上により、今の仕事の多くはAIに奪われる」

という言葉を最近耳にすると思います。

これは論理、確率、統計で解決できる仕事は、ほとんどAIのモノになる(代替えされていく)ということです。

 

つまり逆に言うと、人間に必要な力は「基礎的読解力」であるといえます。この文章を読んでいるほとんどの人は、基礎的読解力はあって当たり前だと思うかもしれませんが、ここで筆者は驚愕のデータを紹介します。

全国2万5千人の中高生に向けた、全国読解力調査の結果

 

学生の3分の1が問題の意味が分かっていないという現実でした。

 

 

例題として一問載せておくと

 

「次の文を読みなさい」

仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカオセアニアに、イスラム教は北アフリカ西アジア中央アジア、東南アジアに主に広がっている。

 

この文脈において、以下の文中の空欄に当てはまる最も適切なものを選択肢の中から一つ選びなさい。

 

オセアニアに広がっているのは(    )である。

 

1、ヒンドゥー教 2、キリスト教 3、イスラム教 4、仏教

 

 答えは当然、2のキリスト教です。

この問題の正答率は、中学生62%、高校生74%だそうです。この問題に回答した全校生徒745人の高等学校は、進学率ほぼ100%の進学校です。

 

「生徒が不真面目に問題を解いたのでは?」

というかもしれませんが、ヒンドゥー教を回答した生徒は非常に少ないことからそうではないことが予想されます。

また、これはコンピューターを使って行われたテストなので、やる気がある受験者とそうでない受験者は、まさに機械学習のような統計手法により見分けることができるそうです。選択肢の選び方や、回答速度などにより、やる気がなかったと思われる受験者を抜いたデータです。

 

因みに、国語の苦手な東ロボ君はこの問題に難なく正解しました。

 

こんな簡単な問題文も読めない子供が、AIにはできない仕事が務められると思いますか?

 

というか、まず「教科書に書いてあること」も本当に理解できているのでしょうか。

 

「基礎的読解力がないよりあるほうがいいと思うけど、ないことはそんなに大騒ぎすることなのか」という意見ももしかしたらあるかもしれませんが、そんなに甘い考えだとだめです。

 

「基礎的読解力が低いと、偏差値の高い高校に入れない」という相関関係は統計によりデータとして存在します。

 

また、読解力がある子供は、日ごろ勉強なんかしなくても教科書を読めば「わかる」のですから、あとの指導はさぞラクでしょう。

たまに同じクラスにいませんでしたか?授業中寝てばっかなのにテストでいい点をとるクラスメイトは。その人は教科書を1回読むだけで内容が頭に入っているのです。これは確かに記憶力も関係しますが、読解力が優れているという要因がとても大きいと推測します。

読解力がないこどもは教科書を読むのにも時間を要します。授業についていくだけでも精一杯で、本当は内容なんか理解できていないのかもしれません。

 

では、どうしたら読解力は上がるのでしょうか。

 

これは、必ずしも「本を読むこと」で上がるわけではないそうです。また、学習時間量や習い事、性格、性別、スマートフォンの使用率、その他直接な相関関係がみられるものはないそうです。

 

えーーーーーーー

 

と思うかもしれませんが、統計上ひとつだけ分かっていることがあります。

「就学補助率が高い学校ほど、読解能力値の平均が低い」ことです。

 

 

つまり

「貧困であるほど読解力にマイナスの影響を与える」

ということです。

 

格差と読解力には関係がありそうですね。

 

後半に続きます。